「北海道のイノベーターを全国に発信する」
清水氏がこの趣旨に最もふさわしい人物の一人であることは間違いない。
航空写真の第一人者である清水氏は、鳥の目になって北海道の自然、人の営み、産業風景を撮り続けてきた。道内上空の総飛行時間は4500時間以上にも及ぶという。
写真を通じて、北海道を全国へ、さらには世界へ発信してきた清水氏。
我々が質問を切り出す間もなく、目の前に置かれたIsMの企画書の表紙に書かれた「北海道から全国へ」という文字を目にして、清水氏は熱く語り始めてくれた。
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【世界で最も鮮やかな表情に彩られる土地・北海道】
>>清水氏
会社を作って33年になりますが創立時からコンセプトは「北海道を写真で発信する」。
仕事としても取り組んでいるのは、
「写真で北海道を記録する」、「写真で魅せる北海道おこし」です。
11月にはシンガポールで写真展をやりますよ。
そこでのテーマは「北海道」です。
写真の仕事を始めて40年、いろんな所に出かけ、いろんな写真を撮ってきました。
海外にテーマを広げた10年間、南米へ行って、アフリカへ行って、アラスカへ行って、インドへ行って、中国へ行って・・・大自然の凄い風景を沢山見て来ました、学んだ事が多かった。
でも一番は、自分が住む北海道ってスゴイ場所だという事を知った事ですね。
----- なぜ北海道が一番なのですか?
>>清水氏
ひとつは、北海道が“水っぽい”という事。
豊かな水に恵まれて、おいしい空気があって、雪が沢山降ってくれるから。
海外撮影のテーマは古代文明でした。
メソポタミア、ナスカの地上絵・・・。二十一世紀へ残された遺産を、それらを空から撮影・記録するということです。
ペルーから始めました。ナスカの地上絵、感動です。
謎の地上絵を上空から見下ろすと、眼下にはコンドル・サル・ハチドリ・クモ・シャチ・ペリカン・花・イヌ・・・・何故か全てが生命体、天からしか全体像が確認できない絵、誰が描いたのか?
大きく描かれた絵を見て思いましたよ、これは宇宙人の仕業だと。
あの土地は固い岩漠なんです。年間の降雨量は1ミリから15ミリですよ。
種を撒いても芽が出ません。芽が出なきゃ花も咲かない。実がならないです。
食べる物が作れないです。描かれている動植物は何処に消えたのか?
考えると、文明が滅びたところというのは全て砂漠化からですね。水が枯れる。水が枯れて人や動植物の住むところが壊れていく。
でも北海道は雪が降る限り、水が枯れることはないですね。
北海道はどこに行っても豊穣な土があって、種を蒔くと芽が出て、花が咲いて、おいしい作物が出来る。緑に囲まれ、おいしい空気。とんでもなく恵まれているわけですよ。
おまけに北海道の周りは多様な海に囲まれていますよね。太平洋、オホーツク海、日本海。
それぞれ海の生態系が違うわけです。海の生態系が違えば、それに隣する陸の植生も違うわけです。動物の種類も違う、花の種類も違う、自然・風景が変わっていく。
こんな小さな島なのに、これだけ多様なものが見られる所は地球上にもそんなに多くは見つからないです。
例えば、カリブ海は一年中夏ですよ、パタゴニア氷河は一年中冬です。アマゾンはジャングルと河しかない。冬の国は冬だけ、夏の国は夏だけ、季節といっても乾期と雨期、雨が降るか降らないかだけですから。
北海道は札幌から知床まで、車で一日走る距離の中に川もあれば、山もあれば、湖もあれば、湿原もあるんです。
----- 北海道に住んでいるとそういうことが当たり前になっていて気づかないですよね。
>>清水氏
南米を一冊の写真集に纏めるのに5年かかりました。
先ほども言いましたが、カリブ海では夏の風景しか撮れません。いろんな風景を撮ろうと思ったら、幾つもの国を回らなきゃいけない。
でも北海道は一年で、春夏秋冬、海も山も川も・・・全部撮れるんです。一年で写真集が作れる。この多様性と季節の変化は、とんでもなく恵まれている事なのです。
カメラマンの視点から被写体としてこれだけ恵まれているということは、そこに住んでいる人だって景観を楽しんでいるはずです。それを当たり前だと思っているだけでね。
北海道は動植物の宝庫です。植生にとって恵まれた環境と水と空気、人間もそれと同じ恩恵を得ているんです。生きやすい環境これはお金では買えませんよ。
その価値を認められるかどうかですね。
それを価値として認められると、少しくらいの貧乏は我慢できますよ。寒いのも我慢できます。
【恵まれた自然を活かす「人」の大切さ】
7月1日から釧路、旭川、札幌で行われ「北海道宣言」を採択した日中韓観光大臣会合(観光サミット)。
そこで使用された国土交通省の作成した北海道PR映像は全て清水氏の撮影した北海道の写真で構成された。
北海道を愛する清水氏だけに、その主要産業である観光に対する問題意識も高い。
>>清水氏
先日、韓国の友人、旅行代理店の社長さんが来ました。今までロシアなどのツアー等を企画していた人なのですが、北海道が好きになり”北海道一本に絞りたい”と言いましたね。
それも「旅」だと言うわけです。
「地元の人との触れ合いを、暮らしの姿をそのままに見てもらう」が、テーマだと言ってました。
北海道に3ヶ月間滞在して、沢山の知人を作ってから韓国に戻り、北海道専門のツーリストの仕事を始めると、旅には思い出がなかったらダメです。
思い出は何が作るかって言ったら「人」が作るんです。
自然・風景だけじゃ思いでは作れないですよ。
パタゴニア氷河。僕の旅は片道40時間かかります、一度見てしまったから・・、片道40時間もかかるなら・・、違う風景を見たい・・・違う国に行きたくなる。でも僕は何回も行きましたよ。
なぜかって言ったら「人」に会いたいからです。想いって時間を経るほど増幅します。
あのパイロットに会いたい、あの時のおばさんに会いたい、それだけで40時間かけても行くんです。
御世話になったあの人に会いたくて、再び訪れる。
海外で体験する事ですが、一回目の歓迎はそれほどじゃなくても2度目に行った時は「お前、前にも来たな」って、「また来てくれたんだな」って、すごく喜んでくれる。
ホテルの人も、お店の人も、覚えていてくれたのかなって嬉しくなる。
北海道もそういう「人との触れ合い、気持ち」を来てくれた人に提供していかないと。
北海道は確かに自然が素晴らしい。でも自然・風景は最初に眼にした時が一番感動するんです。
10回も行けば感動しないですよね。人から与えられた感動は違います。
カメラマンはプロの観光客です。観ることから仕事が始まりますから。
この土地の魅力は何なのかって、観て、感じて、それを記憶として写そうとするわけですよ。
今、国内外からカメラを抱え沢山の人達が北海道に来ています、魅力の無い所に人は集まらないはずです。
そういう視点で観ると「北海道はいける!」って思います。
自然・食産業・歴史・文化・・・幾つも恵まれた素材が北海道にある、観光をビジネスとしても成功しないわけがないです。
後は係わる「人」次第。
IT、WEB時代。情報というのは言葉だけでは伝わらないです、ヴィジュアルが必要です。
写真ですよ、絵ですよ、北海道の魅力を写真で発信すれば世界中の人達に知ってもらえます。
魅せる、それを上手に伝えるのも「人」です。
----- しかし優秀な人材が首都圏に流れていってしまうという現実もあります。
北海道で問題意識を持って、前向きになんとかしていこうと取り組んでいるのは道外出身者が多いという印象を受けます。
北海道の人にとっては、この環境が当たり前になっているのかもしれません。
>>清水氏
写真界でもそうです。自分のテーマを持ち、常に新しい被写体を見出して作品集として発表出来るのは道外写真作家です。地元写真家は目の前に見えてる自然が中心です、裏側にも面白いものが在るのに気がつかない。
北海道人が北海道の魅力を感じなくては。一度離れてみる事が必要なのかもしれません、気がついたら戻って頑張って下さいね、・・。
東京では、大手のIT企業が情報産業として、北海道の写真を利用し売り上げも大きく伸ばしています。
東京には無いわけですよ、自然が。無いから魅力を感じてくれるし、活かしてもくれます。
仕事の話は、東京で熱く語り合えることが多いけどね、北海道では眠たくなるような話になることが多いんです(笑)。
【好きなことで成功するためには、もっともっと好きになる努力をすること】
----- カメラマンになろうと思ったのはなぜですか?
>>清水氏
元々はホテルマンです、40年前は。ホテルの創立の時に企画のスタッフとして入社しました。
その時に広告代理店の電通と仕事したんです。電通はチームを組んでやってくるわけですね。デレクターがいて、デザイナーがいて、スタイリストがいて・・・チームで仕事をする。
えらく格好良く見えたわけですよ、その中でもカメラマンが一番良く見えたのです。
最後にシャッター切るのはカメラマンですから。出来上がった写真は誰の作品かって言えば、カメラマンのものになるわけです。その背景にあるデザイナーとかスタイリストとか、僕にはみんな縁の下の力持ちに見えて、「カメラマンっておいしいな」って思ったんです(笑)。それから写真の学校へ行きました。
----- 空撮を始めたきっかけはあったのですか?
>>清水氏
空は身体を壊してからです。
たぶん北海道で一番働いたカメラマンでしょう?仕事はしました。
で、ストレスが溜まって身体を壊した。
それから空撮ですよ。
自然に浸りたかったんですけど、自然を撮るのって日帰りできないです。スタジオ撮影が忙しかったので、日帰りしなきゃいけない。飛行機だと日帰りできるんですよね。手っ取り早く自然が撮れる。飛行機は僕の足だったんです。
アングルとしても高い所が好きでしたし。
僕が大阪の写真学校を出て、10年後には同級生はみんな写真の世界から消えていました。
それくらい生存競争が激しいです。次から次へと優秀な若者が出てきますから。
でも、北海道は生き残りやすいですよ。風景さえ撮っていれば食べられた。
北海道には綺麗な風景が何処にもあるので、自然が創り出す風景を切り取れば作品になるし、プロにもなれる。
僕が40年もカメラマンやってこられたのは仕事場が北海道だったからですよ。東京、大阪だったらとっくに消えていました。
そういう意味でも北海道に借りを返さなきゃいけないなと思っているんですけどね。
----- 今でこそ「清水武男」を確立していますが、カメラマンを始めた頃は経済的に苦労したこととかありませんか?
>>清水氏
ありません。いつもお金をどう処理するかばかり考えていましたよ(笑)、とんでもなく忙しかったから。
始めた頃から、スタジオカメラマンとしての仕事の写真と、趣味としての写真は分けてきました。
一年365日、毎日どこかで写真を撮ってました。
仕事としての写真も、趣味としての写真もどっちも好きでした。
たとえ、カズノコを撮ろうが大根を撮ろうが、何を撮ってもシャッター切ることが好きです、どんな仕事でも「いい写真だね」と言われたら嬉しかった。嫌いな仕事なんて無かったですね。
たぶんこれからもでしょう。好きな事を仕事にしているだけだから。
----- 好きなことで、お金を稼ぐ。とても幸せなことだと思いますが、「好きなことがわからない」「自分が何をしたいのかわからない」という若者は多いと思います。
そんな若者に何かアドバイスはありますか?
>>清水氏
どうしたら写真が上手になれるかって聞かれたら、被写体を好きになる事ですと応えます。
好きな人ができたら、相手に好かれるために努力しますよね。
花を撮りたければ花を好きになりなさい、動物を撮りたければ動物を好きになりなさい。とにかく好きになる、近づく、そして続ける事。誰でもプロになれますよ、私もプロになれました、という話をします。
どんな仕事も、好きになるということ!それが一番の近道。
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★取材を終えて
清水氏が最も強調して繰り返してくれたのは、いかに北海道という土地が世界的に見ても恵まれた稀有な土地であるか、ということ。
そして、それを活かす、演出する、発信する「人」の大切さ。
北海道にはこれ以上ない「極上の素材」が存在する。これを活かすも殺すも結局は人だということだ。
清水氏の会社、P-BANKの「P」はPhoto(写真)という意味だけではない。
Produce、Planning,Passionの「P」でもあるという。
「この素晴らしい北海道を全国、そして世界へ発信していく」
清水氏の熱い想いは、そのまま私たちの目指すところでもある。
このIsMもその一助となり、一人でも多くの道民が北海道のポテンシャルを再確認し、また一人でも多くの全国の人が北海道に目を向けたならば、私たちの想いも達成されたことになる。
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★プロフィール
清水武男
1943年北海道小樽市生まれ。札幌市在住。
1963年からコマーシャルフォトグラファーとして写真家のキャリアをスタート。
同時に北海道の自然を空から撮り始める(道内飛行時間4500時間以上)。
1990年からテーマを地球に広げ、南米ペルーを皮切りに海外の空撮を行う。
以後、北海道の景観(自然風景)、人の営み、産業風景(農・漁業)を経て、北海道の歴史・文化が現在のテーマ。
2003年よりアイヌの民具、明治時代からの歴史道具、炭鉱遺産などを撮影中。
2005年、札幌芸術賞を受賞。
★関連ウェブサイト
株式会社フォトバンク http://www.phokkaido.co.jp/html/index.html
清水武男写真事務所 http://www.shimizutakeo.jp/
NPO法人 北海道を魅せる写真家集団 miseru http://www.miseru.jp/
★関連書籍
『アイヌ・暮らしの民具』
『空撮・南米大陸』
『遊飛行 空撮・北海道―清水武男写真集 』