イノベーターズモード presented by キャリナビ北海道
File No7

株式会社 メディア・マジック
代表取締役 里見 英樹 氏

もはや現代人の生活に無くてはならない存在となった携帯電話。
急速に普及した「ケータイ」は、もはや単なる電話の域を超え、カメラ、音楽プレーヤー、 テレビ、ショッピングツール、とその用途を日々進化させている。

メディア・マジック代表取締役・里見氏は「もはやケータイは、 現代人のアイデンティティーを表現し、演出する大切なツールになっている。」と語る。

言われてみれば確かにそうだ。写真、音楽、映像…。我々は、自分の趣味、価値観を文字通り 「携帯」して持ち運んでいるのだ。
加速度的に進化するモバイルの世界で、良質で安全なコンテンツを通じて、人々に楽しみと幸せな時間を 提供することを目指しているメディア・マジック。

里見氏の視線は、日本国内のみならず、世界の市場も捉えている。

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【起業のきっかけとなる出会い。順調に見えたスタートと創業5年目の危機】

--------現在、小樽商科大の大学院に通ってらっしゃるということですが? >>里見氏


ええ。MBA(経営管理学修士)ホルダーを目指して今年から通っています。
社長という職業をやっていると、なかなか他人から教えられるという場が少なくなりますしね。
スタートアップに際しいろいろと勉強されてから、用意周到に起業される方もいますが、 私の場合は経営というより、開発指向型で始めました。

最初はプログラマーから始まって、プロジェクトのマネージャーをやるようになり、そして起業。 そうすると、どうしても経営に関する知識が足りない部分がでてきます。
ですから、起業ちょうど10年の節目ですし、経営の精度を上げるためにも、「経営」を更に勉強したい と思い、ビジネススクールへ通っております。


---------起業される以前はプログラマーをされていたとのことですが、 もともとコンピューターは好きだったのですか? >>里見氏


そうですね。高校を時代に、漠然と「最先端の創造的な仕事」に就きたいと思ってました。
「創造的」と考えた時に、自分にとって一番身近だったのが、コンピューター、パソコンだったのです。

---------起業しようと思ったきっかけはあったのですか?
>>里見氏

前職で、私が開発に携わっていたパッケージソフトにトラブルがありました。
私は当時、セールスエンジニア的な仕事も兼務しており、そのソフトのプロモーション、 お客様へのクレーム対応やメンテナンスで飛び回ったことがあったんです。
その時に、とある札幌の海外旅行代理店のお客様のところにもクレーム対応で通うようになったのですが、 何度か通ううちにそこの社長さんに気に入られまして(笑)。
「お前、面白いやつだな。起業するなら応援してやるぞ。」と言ってもらえたんですね。

その時すぐに起業という思いはなかったのですが、それから数年後ですね。
前職での勤続年数も12年目、年齢的にも30代半ばに差し掛かり、そろそろ自分も「次のステージ」へ と思う気持ちが強くなる時期になっていました(笑)。
ずいぶんと人脈も広がり、起業に際し理解を示してくれそうな人もたくさんおりました。
そんな時に、数年前のその「お叱りを受けた社長」の言葉を思い出しまして、本気で相談に行ったんです。
そうしたら「そう言えば、そんな約束したよな。」と笑って気持ち良く引き受けて下さいました。出資に際し 「全部俺が出資したら俺の会社になってしまうから、里見が51、俺が49だ」ということで大枠が決定いたしました。
その社長というのは、実はあの海外旅行のHISを立ち上げた創業メンバーの一人だったのです! 札幌でベンチャー企業や若い経営者を育てたいという想いを持っていたようで、それで私を支援してくれたんですね。


---------里見社長にとって素晴らしい出会いでしたね!
>>里見氏

そうですね。クレームの電話からの出会いでしたけど(笑)。
社長の一言がなかったら、起業はなかったかもしれないですね。残念ながら小川社長は2年前に 亡くなってしまいましたが、私のとって偉大な恩師であり。起業のきっかけを与えてくれことに大変感謝して おります。


---------起業に対する不安はなかったですか?
>>里見氏

不安はいろいろありましたよ!
経営するとは、どういうことだろう?って。
単純に想像すると、例えば20万円で5人を雇えば100万円の給料を支払う。 それに加えて、家賃や光熱費などの販管理費を考えたら、毎月200万円の売り上げは必要だろう・・・。 それを会社が存続する限り業績向上目指して永遠に続いていくこと。
でも心配と言っても、無謀にもそれくらいでしたね。あれこれ考えるよりはまずは始めてみるタイプなもので。


---------創業時は一人で始められたのですか?
>>里見氏

最初は総務・経理担当1人と、開発スタッフ2人(プログラマー)と私の計4名でした。


---------起業当初の仕事というのは?
>>里見氏

今は死語に近いですがマルチメディアコンテンツの分野が得意でしたから、その分野でやっていきたいと 勢い良くスタートしました。
最初は周りの応援もあり、よいスタートを切る事ができました。当時はいろんなものにCD−ROMが 付録やおまけで付いていた時代でした。そうしたキャンペーンの付録、ノベルティーなどの制作業務が 非常に多かったですね。
ところが、会社を立ち上げ間も無くインターネットの専用線サービスが普及し始めたんです。
普及に伴い、ソフトウエアがフリーでインターネットの中で流通し始め、店頭では殆ど売れなくなって しまい、さらにバンドリングと言いまして、パソコンを買うと必要なソフトが一式付いてくるというのが 当たり前の時代になってしまいました。
ですから、私としても開発のスタイルを方向転換せざるを得なくなったのです。
そこからしばらくは、ウィンドウズ用のゲームタイトルを作りながら細々と、という感じでしたね。


---------そんな背景の中、経営の危機的な状況というのは訪れませんでしたか?
>>里見氏

創業当時は、資金もあった、人もいた、仕事もあった、ということで一見順調に感じられたんですね。 でも今思えば、そこに足りなかったのは長期的な「戦略」でした。
ゲームを作りたい、メーカーとしてパッケージソフトを作りたい、という漠然とした想いを持って 起業したのですが、「我々はソフトウエアメーカーとして何を目指しているのか?」というビジョンが 大きく欠けていたんですね。
気がついたら、大手企業からの受託専門業者に成り下がっていたという状況でした。
売上拡大のために新入社員を入れては給料を払うために条件の良い仕事探しをしており、 開発としては後手に回ってしまっている感がありました。これはどうも自分の当初イメージしていた会社では ないと思い始めている頃でもありました。更なる発展を目指して、何か大きな開発をしなくてはならないと 考えていた時に、コンシューマ向けの携帯ゲーム機とプレイステーション2のゲームタイトルを受託する事が できました。我々にとってはとても大きな仕事です!
受託の拡大と共に一気に社員も14,5人に増え、前年の売り上げが1億円くらいだったのが、 倍の2億円弱まで行きました。


ところが、開発途中の1年後です。
突然、携帯ゲーム機の仕事も、プレステ2の仕事も開発中止になってしまったんです!
ゲーム業界の仕事というのは、先行き不透明になったりすると、突然開発を打ち切られたりすることが 多々あるのですが、我々も突然開発中止という憂き目に遭いました。それも2つとも同時期に、です!!

そうなると十数名もの社員を今後どうするか、東京に開設した開発分室(プレステ2部隊)を どうするか?
本当に困りましたね。
当時の幹部はもう罵りあい、怒鳴りあい、責任のなすりつけ合い、「お前のせいだ!」 「責任とって会社辞めろ!ここから飛び降りろ!」なんて(笑)。皆で叫んだり、泣いたり大騒ぎでしたね。
そして今後の経営計画案を明け方まで、何日も何日も練り直し・・・。


このまま行けば数ヶ月後には資金ショートする事は目に見えていましたから、 なんとか立て直さなきゃいけない。
まずは経費の見直し削減から始まり、最後には禁断の給与削減。スリムな組織にする為には給与の 見直しも避けては通れません。皆の生活を考えると心苦しいのですが、例外なく一律15%カットを 実行しました。また、開発を継続したいと要望のあった東京分室は、機材その他は全て譲渡し独立採算で 継続するか、それとも解散するかという窮極の選択をしてもらいました。結局、東京の分室は解散、閉鎖と いうことになりました。分室閉鎖と共に創業メンバーの一人が会社を去らなくてはならない現状は とても辛かったですね。
その時期はとにかく最悪な時期でした。


---------それは創業から何年目ですか?
>>里見氏

5年目です。順調に行っていた時には目につかなかった問題や、気にはしていながらうまく行っていた ので触れなかった問題も、状況が悪くなると一気に噴出するんですね。
本当に大変でした。


でもそういう苦しい時期を経験したからこそ、本来やるべき方向に軌道修正する機会を 得られた、という思いはありますよ。
誰しもそうした火事場の馬鹿力的なエネルギーは秘めているとは思うんです。
でも全てが順調に行っている時には、なかなか発揮できないですし、忘れがちになってしまうんですね。
マイナスからゼロへ、さらにはプラスへ持っていくエネルギーというのは大変なものです。 ですから、あの時期の経験は今でもすごく役に立っていますよ!


【ケータイスタジオの誕生と次なる戦略。海外市場も視野に!】

---------その危機をどのように乗り切ったのですか?
>>里見氏

まずはとにかくたくさんの人に会いに行き、いろいろ相談しましたね。
増資に向けて出資をお願いしたり、困難に立ち向かうためのアドバイスをしていただいたり。
経営的に不安定な時期というのは、なかなか増資に応じてもらえないのですが、 とにかく正直に全て包み隠さず、精力的に説明に回りました。
もちろん「経営が厳しいから助けてくれ」だけでは誰も話をまともに聞いてくれません。 ちょうどその頃、NTTドコモのi-modeサービス等の携帯コンテンツビジネスが爆発的に伸びていた時期 でしたから、プラットフォームこそ変わりますが、携帯コンテンツに賭けていきたい、と将来ビジョンも 語って、本当にたくさんの方に今後の経営プランを聞いていただきました。
それらの経営プランに賛同をいただけ、増資にも成功し、携帯コンテンツに特化した形で 再スタートを切る事ができました。


---------携帯コンテンツに特化していったのは、その時期からですか?
>>里見氏

そうですね。
危機に直面するまで、とにかく食っていくためにいろんな仕事をしていました。
スクリーンセーバーも作る、地下鉄や新幹線に関わるシステムも作る、ゲームも作る…。
ソフトウエア開発に関わることならとにかく何でもやっていました。


ゲームの開発が中止になると同時に、新しい動きを始めました。
これからは携帯に特化していくべきだろうと。
携帯コンテンツ市場が伸び始めた時期でしたし、ちょうどGAINAXからエヴァンゲリオンのサイトを 運営する許諾をいただいたこともあります。
ネームバリューのあるタイトルですから、5万人超の利用者は見込めると確信を持ってスタートしました。


---------携帯に特化していくに当たって、技術的な問題はなかったのですか?
>>里見氏


携帯に関する技術は問題がなかったのですが、要は「技術の蓄積」を会社としてどうするか、 という戦略が必要だと思いました。
技術というのは個々の技術者に付くものであって、会社に帰属しにくい一面もあります。
なおかつITは技術者の流動性が高い業界です。
ですから、携帯に特化していくに当たって、一番頭を悩ませたのはそこです。
誰かが抜けても、会社として技術を蓄積・保持していくにはどうしたらいいのだろう、ということです。

サイトの利用者も順調に増えていったのですが、やはり運営、保守に関して、 個々の技術者に依存していたのです。
サイトの更新、改変、さらにはリニューアルなども、全て担当技術者に依存して行なわなければ ならないわけです。
そうなると対応のスピードが技術者ペースになり、どうしても遅くなってきますし、 万一その技術者が辞めてしまった場合のサイトの維持運営に関して大きなリスクを持つことになります。 これは技術が会社に蓄積されるようなモデルを作らなきゃいけないと思いました。 そこから、「ケータイスタジオ」というコンテンツマネージメントシステムが生まれたのです。


厳密に言えば、技術を会社に残す、ということはもちろん、アルバイトや技術を持たない スタッフでもサイト作りに参加できるようにする、という考え方です。
専門のプログラマーはケータイスタジオ自体の開発に取り組み、携帯サイトの運営には直接的には 関わらないと明確に線を引きました。
プログラマーは人件費が高いですよね。それがアルバイトで開発できるようになれば、 携帯サイト一つ作るにも、そこにかかる開発コストも大きく削減、しかも制作期間はスピードアップを 図れるわけです。
それまでプログラマーの技術に依存していたものが、このケータイスタジオを使用することによって、 アルバイトやデザイナーでも携帯サイトを運営・構築できるようになりました。 これは従来の開発手法とは大きく変わったところです。


---------すごいことですね!
>>里見氏

大きなターニングポイントですね。
それまでサイトの構築や改変などでもいちいちプログラマーに依存していたいものが、 ケータイスタジオの機能の範囲内であれば、誰でも自由に仕事を進められる。
現在運営しているエヴァンゲリオンのサイトもケータイスタジオで生まれました。
昔から見ると格段に進歩しまして、たくさんのユーザーから支持を受けているのも、 そのコンテンツの運営がフレキシブルになったせいだと思っています。


---------更新やユーザー対応なども格段にスピードアップするわけですね?
>>里見氏

はい。我々にとって便利なものは、当たり前ですが他社にとっても便利ですから、 ケータイスタジオはパッケージ化して、他社にも提供して使っていただいています。

ですから、エヴァンゲリオンを始めとしてケータイスタジオを活用した自社の運営サイトを どんどん増やしていきたいと思っていると同時に、ケータイスタジオ自体を他社にどんどん導入して もらって、便利に使っていただきたいと思っています。


---------里見社長の次の「戦略」を教えてください。
>>里見氏

今、「web 2.0」という言葉が出てきていますが、携帯の世界も今まさに「web 2.0」が 浸透してきています。
弊社のサイトが支持されている一つの理由が、「コミュニティ」という部分だと思っています。
しかし「コミュニティ」の世界にも様々な問題が存在しています。例えば、誹謗中傷であるとか、 個人情報の書き込みであるとか…。
優れたコンテンツを提供していくには、そういう問題の対処に取り組んでいかなければならないと 思っています。たった一件の書き込みが時には訴訟沙汰になる可能性だってあるわけです。

そのために現在、「投稿管理システム」を開発しています。
例えば、某巨大掲示板ポータルサイトを想像して欲しいのですが、爆破予告、誹謗中傷、 根拠のない噂などが絶え間なく書き込まれています。なぜそういうことが起きるかというと、 ユーザーが自由に書き込めて、それがすぐに公開されるからです。 公開された後にそれらを素早くチェックして削除できる態勢が整っていないわけです。

我々が考えているのは、まず書き込まれた内容を事前にチェックしてから公開されるようにする、 という方法。弊社の「投稿管理システム」では素早く、適確に、公開前の書き込みに含まれた内容を 目視でチェックできるようになっています。

私たちの運営するサイトのコミュニティは平均すると一日約3000件の書き込みがあります。
月にすると約10万件です。
それらのチェックを他社に委託すると、100万単位のコストがかかってしまいます。
私どもは、現在「投稿管理システム」を使って、アルバイト5名ほどで管理業務を行っていますが、 数十万のコストで運用可能となります。
このシステムを使えば、大量の書き込みを目視で簡単に、しかもスピーディーに管理できた上に、 管理コストも削減できるというメリットを持っています。

とにかくコミュニティ、BBSというのはトラブルが絶えないですから、 この手のビジネスというのは近年急速に伸びているんですね。
弊社は今現在すでにこの「投稿管理システム」を運用していますから、今後はその技術、 ノウハウをパッケージ化して提供していきたいと考えています。


---------パッケージ化は、いつくらいを予定しているのですか?
>>里見氏

現在のバージョンは既に2年前から社内で動いていますから、来年度中にはパッケージ化して 他社に提供していきたいと考えています。
既に問い合わせも結構来ているんですよ。

弊社の「投稿管理システム」は携帯には特化しているのですが、パソコンにももちろん応用できます。
サイト上にコミュニティを持ちたいけれど、いわゆる「コミュニティの場でのトラブルによる イメージダウン」が恐いと考えている企業はたくさんあると思うのですが、このシステムを使えば、 簡単に、安価にその心配が解消できます、というのが我々の提案です。


---------韓国、台湾をはじめとした東アジアを出発点として世界進出という夢もお持ちのようですね。
>>里見氏

エヴァンゲリオンは、この度文化庁が選出した「日本のメディア芸術100選」のアニメ部門で1位に輝きました。
日本を代表する文化の一つとして世界に発信していきましょうという動きもありまして、GAINAXからも、 エヴァンゲリオン等の携帯コンテンツを積極的に海外に広めて欲しいとも言われています。

東アジアを中心に、携帯のコンテンツビジネスは急速に成長しています。
現在既に韓国の企業とも提携を結んでいますし、韓国を皮切りに、アジア、世界へ、と考えています。
台湾をはじめ、各国から引き合いも実際に来ています。


---------企業としての将来ビジョンはどのようにお考えですか?
今後も携帯に特化して進んでいきたいと考えているのですか?

>>里見氏

いえ。携帯にこだわっているわけではないのです。
確かに当面は携帯をメインにビジネスを拡大していきたいとは考えています。 しかし、現在の25名という小人数では、特化して集中するという戦略が必要だと考えているのです。
ですから、今後IPOも視野に入れた成長の途上で、事業の多角化というのは意識していますし、 必要だと思っています。
その時には、携帯にはこだわらずに多様なプラットフォームでの「コンテンツ」を提供できる会社に なりたいですね!
我々は「携帯ビジネス」を目指すのではなく、「コンテンツビジネス」ということを念頭に置いて 発展していきたいと思っています!


【大切なのは主体性。経営者は社員の意欲向上を、若者は自らアクションを。】

---------里見社長は、出身は北海道ですか?
>>里見氏

はい。北海道の芦別という町の出身です。もちろん北海道は大好きですよ。


---------北海道の好きなところはどういったところですか?
>>里見氏

私も趣味であちこち海外旅行に行きましたけど、北海道ほど四季の移り変わりが鮮やかな感じられる ところは少ないんじゃないかなと思います。
春夏秋冬のそれぞれの季節の良さを感じられるのは北海道住民にとって素晴らしい宝だと思っております。
冬の厳しささえもまた、道民にとっては一年のサイクルの節目を感じる重要なファクターです。
このような四季の移ろいを自然豊かな中で感じられるのは、世界的に見ても恵まれた環境なのでは ないかなと思っています。


---------しかしビジネスの前線にいると、北海道への苦言もあるかと思います。
>>里見氏

ビジネスという面で考えると、どうしても首都圏と比べると、「北海道時間」と言いますか、 のんびりしたところがありますね。これは私自身についても言えることです。
首都圏のIT企業との競争、ということも意識しなくてはいけないのでしょうが、 どうしても北海道には独特の時間の流れがありますね。
裏を返せば、北海道に住んでいるのだからのんびり仕事をしたいという思いもあるのかもしれませんが、 ビジネスとしては「仕事の質」と共に、スピードと集中も絶対必須です。
そういう意味で、北海道のIT企業は、もっとスピード感のある革新的な経営手法が必要と思っています。


---------アジェンダの松井社長も、北海道のIT企業への危惧を口にしていました。
「自社の商品を持とうという意識が少ない。このまま下請けだけを中心に進むならば、 中国やインドに仕事を取られる」と。

>>里見氏

松井社長の意見にはとても賛同します。
繰り返しになりますが、企業として「イノベーション」が大切だと思っています。
「目指しているものは何か、何のために起業したのか」を常に意識する事です。 目的が例え「横受けや下請け」であっても全く構わないと思うんです。だとしたら、一流の受託企業として、 中国やインド企業との競争に勝ち抜く事のできる戦略を持つことですよね。そういった戦略がなく、 「今まで通り・・・」と考えている企業が多いのかもしれません。

また、「メーカー」として存在するにしても、自分たちの優位性は何なのか、 それを支える技術は何なのか、さらにそれを支える人材採用・育成はどうするのか。
そういった経営資源を十分活用するための戦略をトータル的に考えなくてはならないと思うんです。
逆に言えば、その戦略を実施できる企業は、結果として頭一つ抜きん出た存在になっているのかも しれないですね。
それから北海道には「マーケティング」の思考を持った会社も少ないかもしれないですね。
素晴らしい技術を持っている会社は本当にたくさんあると思います。
しかしその技術を「誰に」「どのように」という意識が欠けているのではないでしょうか?

そうした「経営戦略」「マーケティング戦略」を実践することにより、北海道のIT企業も首都圏の 企業と互角に戦えるはずだと思います。


----------最後に若者へメッセージをください。
これは北海道に限った話ではないですが、少子化、ニート・フリーター化で 若年層の労働力が著しく減少しています。
それに加えて、北海道は新卒入社後、3年以内の離職率がとても高い地域でもあります。

>>里見氏

それは若者側、企業側、どちらの責任なのでしょうかね?
私も数年前までは、すぐに辞めてしまう若者に対して苦い思いもありました。 「石の上にも3年。もう大人なのだから嫌なことも我慢しなきゃいけない!」みたいな考え方ですね。
でも今はそう思わなくなりました。
企業側が、働く人の意欲向上も含めて、何か強いエネルギーを与えなくてはいけないと思い始めたんです。
社員がコミットメントするための、環境やインセンティブを常に向上していかないと、 そのうち社員は去っていってしまいますよね。
それは今、私自身の課題としても強く意識しているところです。


---------経営者として素晴らしい考え方だと思います。 しかし「若者の意識向上」ということも、大人や社会の責任だと思います。
>>里見氏

そうですね。
主体的に行動できるようになることが、とても大切かと思います。
誰かが何かをしてくれるというのは大きな勘違いですから、自分自身が何をしなきゃいけないのかを 常に考えることです。
例えば、誰かに何かを指示されて行動した結果、ある程度上手くいった。
それで「成長した」と感じることも多々あります。でもそれは誰かに動かされただけ、 影響されただけで、自らの成長を忘れているかもしれません。

誰かに何かを影響されて、「自分は変わった」と思っても、影響を与えた人間が傍にいないと 何も出来ない自分がいるかもしれません。それでは変わった事にはなりませんね。
自分で主体的に考えて行動してみる。それで間違って転んでも、怪我しても、自分の意思で行動して 何かを掴み取った、という感覚を持つことができたとしたら、それはその人間にとってとても大きな経験となり、 将来においては能力となるはずです。

そのためにも、積極的に冒険し経験を積むという意味で世界に出かけることを勧めています。
世界を知ることはとても大切です。遠くから客観的に自分のポジションを再確認する事にもなります。
特に言葉の通じないところに行って、不自由になるのも時としていい経験です。
異国の地で器用に行動するためには、非日常的な能力を要求されますが、それは主体的に行動できるように なる大きな要因になりますよ!


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★取材を終えて

明るく笑い話のように、経営危機の時の状況を語ってくれた里見氏。
今でこそ笑い話として語れるだろうが、当時の苦労は我々の想像を絶するものがあったはずだ。
どんな人にでも、どんな仕事をしていても、必ず危機的状況が一度は訪れるはずである。
そこで何を得るか、そして得たものをどう活かせるか。
里見社長が得たものは「経営者としての戦略の重要性」なのだと思う。
方向性、技術の蓄積、人材の確保…。特に個人に頼らない「仕組み作り」は組織構築において とても大切なことだと納得させられた。
「売れる営業マンが欲しい」「優秀な技術者が欲しい」それだけを繰り返す経営者は多い。
しかし人材の大切さを認識し、人材は求め続けながらもその一方で、優れた営業マンに頼らなくても 「売れる仕組み」、優れた技術者に頼らなくても「開発できる仕組み」を作ることは経営者の最も重要な戦略で あり、その成否が企業としての発展を左右するのではないかと思う。
若者の離職は経営者の責任だという発言も、裏を返せば、人材採用・人材保持のための「仕組み作り」の 必要性も意識しているから発せられた言葉だと感じた。

「トータルな戦略を確立できた企業こそが抜きん出る」と語った里見氏。
戦略の重要性を認識し、戦略の確立に動き始めたメディア・マジック自身が、そのことを証明する日も そう遠くないかもしれない。


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★プロフィール

1961年  北海道芦別市出身

1985年  ダットジャパン鞄社
マルチメディアコンテンツ制作プロデューサーとして多数のコンテンツを手がける。

1996年 同社退社、潟<fィア・マジック設立

2001年 新世紀エヴァンゲリオンの携帯ポータルサイト
「アニメiGAINAX」をi-mode向けに配信開始

2005年 札幌商工会議所より「北の起業家表彰」奨励賞受賞

2006年 MBA取得を目指し、小樽商科大学大学院商学研究科に入学

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★関連ウェブサイト

株式会社 メディアマジック
http://www.mediamagic.co.jp/

「キャリナビ北海道」求人情報
http://www.4510navi.com/modules/mxdirectory/singlelink.php?lid=127

エヴァ&アニメiGAINAX
(i-mode)
http://www.i-gainax.mediamagic.co.jp/

(EZ web)
http://www.ez-gainax.mediamagic.co.jp/

(Softbank)
http://www.v-gainax.mediamagic.co.jp/

babydogs
http://www.babydogs.jp/pre/info.htm


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里見氏推薦書籍

照屋 華子、岡田 恵子 『ロジカル・シンキング』


「論理的思考というのはとても大切です。
物事の根拠や理由を論理的に分析する能力は必要です。
誰かが言っていたから、とか、なんとなく、という理由で物事を判断したり、 行動したりするのはとてもよくないと思います。
自分の発言・行動に、論理的な根拠付けをする思考を磨くことは若い人だけじゃなく、 我々の世代にも大切ですね。」


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