イノベーターズモード presented by キャリナビ北海道

File No16

株式会社 アグリスクラム北海道
代表取締役社長 大石 富一 氏

北海道各地の農業者が自らの手で、こだわりや想いを持って作った地域特産の味を直接お客様に届けたい!
熱い想いを持った北海道農業をリードする面々が集まり結成された株式会社アグリスクラム北海道。

設立時に23 社だった出資者は大きく膨らみ、現在では42社(2007年2月現在)と今なお増加中!
農産物・食品の価格競争が目に付く昨今でも、価格よりも品質や信頼性、地域特産の味を求めている消費者はたくさんいる。
アグリスクラムは「大地の仕事」を統一ブランドに、各社が持つ販売ルートを活かし合ってナショナルブランドにはないこだわりの品質や味を全国へ提供する。

また農産物を、生産コストや適正な利益を踏まえて適正な価格で販売することにより、消費者の満足度はもちろん、農業生産法人の自立をも促している。
「農業を通して社会に貢献したい!」という同社代表・大石氏の想いは強い。

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【農業の経営危機から肌で感じた農産物流通の矛盾を改善したい!!】

--------大石社長の生まれは北海道ですか? >>大石氏


そうです。北海道の大樹町というところで生まれました。
高校も大樹町です。高校を卒業してすぐに実家の農業に従事しましたので、この歳になるまで他で生活したことがなく、ずっと農業をしていました。


--------御自身は、農家として何を作られていたのですか? >>大石氏


私が高校を卒業して働くようになった当時は牧草が中心でした。馬の餌ですね。

うちの祖父が北海道に入植してきた当時は、内地の農業をそのまま持ってきて、蕎麦・いなきび・豆を始めとした畑作を行なっていたんですね。
父の時代、連作(※注)をしてはいけないというのが農業の基本なのですが、経営が苦しかった時期に目先の利益を短絡的に見込んで、ビートの連作をしたことがあったんです。

そうしたら冷害のせいもあって全然収穫できなくて、目先の利益すら確保できずに大赤字となりました。真剣に離農を考えた時期もあったんです。

そんな時期に偶然、牧草栽培の話が入ってきました。

当時、日本に牛乳が普及し始め、乳牛をたくさん飼い始めた時期でした。
そうすると家畜の餌の牧草を作る農地が必要になります。
本州ではそれが厳しいので、北海道が牧草の供給地となりました。
その当時は為替の関係でまだ輸入の牧草が入ってきませんでしたから、国内の牧草が高く売れたんですよね。それがうちが牧草をやり始めたきっかけなんです。

※連作・・・同じ耕地に同じ種類の作物を毎年続けて作付けすること


--------それはいつ頃のことですか? >>大石氏


私がまだ小学校3,4年生の頃ですから、今から40年ほど前のことです。

当時はどんな牧草でも売れました。今みたいに品質に厳しくなかったですから、草の形をしていればどんなものでも売れたんですよ(笑)。
「こんなものでもいいのかな?」というものまで売れました。河川敷に生えている草で柳とかが混ったりもしていましたから。なんて不謹慎で不道徳なことか!
もちろん私はまだ子供でしたけど、「これは信用を落とすだろうな」と、子供ながらに感じていましたね。でも親たちは背に腹は変えられなかったのだと思います。

牧草生産をさらに拡大するために、稼いだお金でかなり無理をして大きな土地を買い、そこに一気に投資しました。
しかし、いくらも立たないうちに、為替が自由化になり、農産物がどんどん安く輸入されてくる時代になりました。
当然牧草の値段が下がって、買った土地の代金をどうやって払おう?牧草を作っていても利益が出ない!と、また苦しくなってしまったんです。
それが20年位前の話です。

そして今度は、農協始動で隣町で作っていた大根を試しに作ろう!ということになりました。
ですが、品質の良い大根を作って農協に出荷しても、得られるお金がどうも納得できる金額ではないんですよね。
農業を続けていけるだけのお金が得られない。何故なんだ?と色々調べて、どういう選択をすればいいか真剣に考えました。

それで、「自分で販売する」という結論にたどり着きました。出荷だけをして、販売を他者に任せているからダメなのだ!自分でいいものを作って、自分で売らなければいけない!ということに行き着いたわけです。

そうして、自分で市場へ直接販売するようになったのが平成8年です。
親から経営を任された平成5年に法人化していましたが、本当の有限会社 大石農産の始まりです。


--------農家が適正な報酬を得られていない現状に対する問題意識が、アグリスクラムを立ち上げるきっかけとなったのですか? >>大石氏


そうですね。平成8年に道内の農業生産法人の集合体「北海道農業法人会議」という組織が出来上がったんです。
北海道農業法人会議というのは全道で330もの農業体が加盟している団体です。そこに私も立ち上げから加わって勉強会や情報収集をしていたんですよね。
平成15年には、単純な情報のやり取りだけではなく、もう少し販売に関する深い勉強がしたいという仲間が集まり「直売研究会(通称アグリスクラム)」という会が出来ました。私はその運営委員をやっていたんです。

しかし、「勉強してるだけではだめだ!実践的な組織にしていこう!」ということで、 株式会社化することになりました。
株式会社の方が購買者からの信用も得られるだろうという判断もありました。

株主は設立当初、農業法人会議の会員の中から23社が手を上げてくれ、その出資金を元に株式会社を作りました。それが、平成17年の7月です。
現在では、42社まで出資していただける方が増えました。


--------立上げの際に苦労されたことは? >>大石氏


いっぱいありましたよ(笑)。
結局、当社の事業の第一は農産物の仕入れ卸です。
当然、売上を上げなければいけない。
しかし、アグリスクラムの役員になっている人達は、それぞれ自分たちの農業経営がありますから、こちらの活動に集中できないんです。
ですから事務所を借りて、事務員を雇ったものの、最初は主に広報活動に終始し営業活動らしいことがほとんどできなくて、出資金を食い潰していくしかないわけですよ。
「このままではだめだ!営業をおかなければいけない!」と思い、思い切って平成18年3月にアグリスクラムの専任の営業を雇いました。

4月から営業活動を始め、色んなところで注目されて、新聞記事にも載り、雑誌の取材も受け、メディアには取り上げていただきました。
ですが、なかなか思うようには売れていきません。
営業が不慣れだったこともありますし、舵取りをするべき私も札幌に常駐していないということで、出資者にも、営業として雇った社員にも迷惑をかけてしまいました。

私も大樹町の大石農産での仕事があり、現場のスタッフはそれなりにいるのですが、経営はそれまで一人でやり繰りしていました。
アグリスクラムからはまだ給料を頂ける状況では無かったですし、自分の生活収入の母体である大石農産を他に任せられるだけの度胸がなかったんです。
でも、アグリスクラムは大事な組織です。
「アグリスクラムの仕事(販売)を頑張る方が、大石農産のため、北海道のため、農業のためになるんだ!」と自分に納得させて、アグリスクラムの仕事に専念しようと決意しました。
そして、大石農産を他の役員・スタッフに任せて、札幌に常駐し腰をすえて活動を始めたんです。


--------では、アグリスクラムの活動はこれからが本番ですね! >>大石氏


今年の1月にこちらに引っ越してきたばっかりですから、まさにこれからですね!
株主さんたちは設立からしばらくは半信半疑という感じだったんですけど、私がここに常駐してやっていくということを表明して、「潰すも潰さないも皆さんのご協力次第です!」と。「皆さんが出資している会社ですから」と、踏み込んだ発言や協力を促しました。
アグリスクラム北海道は今年が正念場で、北海道の農業をこれからどうしていくかというのは、私と株主さんたちの協力次第だと思っています。


【未来の農業のために 〜 地球環境の保全と農業経営自立を!】

--------農家の方の適正な報酬獲得がアグリスクラムの第一の運営目的ですか? >>大石氏


それが一番だとは考えていません。
弊社の理念としては、地球環境を守るため啓蒙活動、ということも大きな目的としているのです。

人間が生きるために、社会を守るために、どんな生活をしなければいけないのか?
そういったことを一人ひとりに考えて欲しい。
お金を出せばいい、便利ならいい、ということではなく、守らなければいけない世界があるという事を認識してほしい。
生産者も消費者も常にそのことを理解して、その上で弊社の扱う商品を販売してくれるスーパーなどとお付き合いしていきたいと思っています。そういう意識の高い生産者、販売者、購入者の連携を作っていきたい。そのための活動をしていきたいのです。

そのためにはまず我々生産者が、どういう農産物を提供できるかという事ですよね。
それはやはり環境にこだわった農産物であり、少しでも安全にこだわった食品であり、生産段階の情報もわかってもらえるもの。そういうことにこだわったものを作って、販売していくべきだと思っています。

アグリスクラムが、そうしたこだわりを持ち続けて、それが消費者に支持されるようになれば、高い意識を持つ生産者がどんどん増えていくと思います。
そのためにも頑張らなくてはいけないと自覚しています。


--------やはり農業をされていると、環境問題への危機感は強くなりますか? >>大石氏


農業を通してもよりも、最近のニュースや報道を通じて、世の中がおかしくなってきているのかなと感じます。
環境問題そのものだけではなく、人々の意識の問題にも強い危機感を感じます。

消費者は、安全でおいしいものであれば喜んで買います。
そこに「安ければ」という大きな要求が出てきます。
でも僕はこの「安ければ」ということが、世の中のいろんな問題を引き起こしている要因の一つだと思っています。

建築の偽装問題にしてもそうですし、食品衛生の問題もそうです。

例えば、「賞味期限」というものが表記されるようになって、世の中は無駄なことを一生懸命しているように思えます。賞味期限がきたら捨てるわけですから。それは、そこに至るまでにかけて来たエネルギーや資源を捨ててしまうということです。
消費者のために「賞味期限」を設けて、期限が過ぎれば無駄に廃棄をし、地球に負荷を掛けている。
これが本当に正しい選択なのか、という事をもっとみんなに考えてもらいたいです。


人が相手へ仕事を要求する時に「安ければ」という視点で要求することが、その物自体の価値を下げている、ということに気付いてないんですね。

本質をわからないとだめですよね。人に頼るのであれば頼るだけのコストを払わなければいけません。そのコストを支払うことを避けていることで、自然や環境に負荷を押し付けていることが本当に多い。

そういうことを、この仕事を通じてメッセージとして社会に送りたいんです!
自分自身で、腐っているものと腐っていないもの、安全なものと安全ではないもの、を識別できる能力を身につけなくていいんですか?ということです。
消費者は店頭で、商品に記載された「賞味期限」の新しいものから買って、賞味期限の短いものを残し無駄に廃棄してないですか?と。

安全かそうでないかを判断できる力が「生きる力」だと思います。
それを学校や家庭、もしくは自然環境から学ぶべきです。
だけど、今は大多数の人間が都会に住んでいて、自然の中で生活するということ経験がないから、食べ物も何が腐っていて何が安全か分からない。

我々が生きている根本を深く考えていくと、地球環境が非常に重要な要素なんです。
要素と言うよりは、これがないと生きられないという「前提」です。
ところが今の世の中は、そこに気付いていても、人間の個人的な利益=お金を得ることだけに意識が集中してしまっていると思うんです。
皆が守っていかなくてはいけないものから目をそらしていると思うんです。

人が生きるということは、食べるということです。
そして、農業生産者が食べるものを作るには、安定した地球環境が必要です。

ということは、我々人間は安定した地球環境があってこそ生きることができるんです。

それを忘れて経済だけに目がいき、お金があれば個人的な欲求を満たすことができる、という考えが支配的になってしまっています。お金が目的化してしまっている。
でも、そうではないんです!そのために犠牲にしてしまっているものがある。
そういうことをこのアグリスクラムの活動を通じて伝えて行きたいですね。


--------それでは、アグリスクラムのもう一つの事業目的である「農業法人の自立」ということについてお話していただきたいと思います。 >>大石氏


北海道に農業経営体は約5万戸ありますが、きちんと企業体をなしている農業法人は本当に少ないんですよね。それに、担い手のいない農家は半分以上です。
電話が掛かってきたらちゃんと電話を取って、受注をうけたら発注書を書いて、納品書・請求書を書いて、という事務作業が出来る農業生産法人も少ないのです。

私の大石農産もそうです。組織として成り立つ普通の売上が得られてないんです。

農業者が正当な報酬を得て、事務員などの人員も雇用していける体制を作れなければ、担い手も育たず、食料自給率の低い日本は大変なことになると思います。

そこに持っていくためには、最終的に支払ってもらわなければいけないコストはいくらなのかということを消費者に正確に伝えて理解してもらいたい。
今は、生産者から消費者までの経路に絡んでいる組織が複雑過ぎて、全部ブラックボックスの中に入っています。


--------環境問題や農家の自立に強い使命感を持つようになったきっかけのようなことはあったのですか? >>大石氏


凄く大きなきっかけとなったことは3人の息子が全員農業をやりたい!と言ってきたことなんですよ。
子供たちから将来農業をやりたいと言われた瞬間から、このままの農業では、そしてそれのみならずこのままの社会構造、経済構造を続けていては、地球環境が悪化し農業が出来なくなるのは間違いないなと思いました。
地球環境が壊れていくと、安定した栽培が出来なくなる、農業で生活していくことが出来なくなります。
そう考えた時に、これは早く変えなきゃいけない!と思ったわけです。
身近な家族や自分の子供たちのことを考えたら「やらなければいけない!」という使命感が生まれたんですよ。


--------農業の担い手育成や就農者支援もアグリスクラムの事業目的に挙げられています。
農業を志す若者にメッセージをいただけますか?
>>大石氏


生まれてきたからには、社会の役に立ちたいと思うのは当たり前だと思うんです。
それが評価される仕事かどうかと言うのは、他人が決めることですが、農業にはその根本があります。

仕事を選ぶにしても、単純にお金を得たいと思って選ぶものと、社会の役に立ちたいと思って選ぶものがあると思うんですよね。
単純にお金を得るという手段だけではなくて、どういう形で社会に役に立っている仕事なのかということを選択して欲しいですね。
決してそれが給料はあまり高くない仕事であったとしても、お金は後から付いてくると思って欲しい。
社会で大事な仕事かどうかということを大切にして欲しいですね。
世の中の歪みに流されずに、本当に正しい選択をしようという気持ちを持ってもらいたいです。

世の中にはたくさんの仕事があります。
悪い仕事とされることでも、利用する人や買う人がいるから成り立つんですよね。

だから消費者個々の考え方を変えていかなくてはいけないですよね。それは誰が変えるか、です。
メッセージを聞いた一人ひとりが変えなければ、変えると言う気持ちがなければ世の中は変わらないですよね。
法律で強制しても何も意味が無いですし、何も効果がないですよ。法律に触れなければ何をしてもいい、と考えている人がたくさんいますから。
倫理観や道徳観をきちんと身に付け、良いことと悪いことをきちんと判断する。だから、世の中がきちんと成り立つと、私は思うのです。


--------大石農産で総合学習への取り組みとして、子供たちに農作業体験の場を提供しているのもそういった想いがあるからでしょうか? >>大石氏


そうですね。もともとは地元の学校から話をいただいて、1、2時間だけ農業体験だけをさせてくれればいいというお話だったので、収穫だけを体験するカリキュラムを組んでいたんです。
だけど、収穫だけでは意味が無いと思いまして、種を植えて、途中で草刈などの管理をして、最後に収穫するという一連の流れをある程度の期間をかけて体験する形に変えましょう、という提案をしたらそれが受け入れてもらえました。

子供の頃から環境問題を意識の中に入れて欲しいという思いがあったので、総合学習時にはどこかの段階で必ずその話をしています。
人間が生きるということの根本について話をしています。
聞いている方はまだわからないと思いますよ(笑)。全くわかってないかもしれませんね(笑)。
だけどどこかで問題にぶつかった時に、あの時こういう話をしていたな、と思い出してくれればいいなと思います。
多くの人たちにこういう話を伝えたいですし、少しでも多くの人たちに伝えられるような仕組み作りを、アグリスクラム北海道を通しても様々な方たちと連携しながらやっていきたいと思っています。


--------最後に、大石社長の夢を教えてください。 >>大石氏


僕の夢ですか?
夢は・・・そうだなぁ。
皆さん、大会社の社長さんにしても夢をよく語っていますよね(笑)。
僕は、この地球環境を皆が意識して守らなくてはいけないと思っているので、皆が本気で考えるような社会を作っていける、その一員になりたいと思いますね!
ささやかですが、大きな夢です。


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★取材を終えて

株式会社 アグリスクラム北海道のコーポレートマーク兼ブランドマークは太陽、空気、水、土の力に感謝する気持ち、やりがいのある農業、そして心を込めてつくった食べ物に出会える幸せな暮らしを表現している。
それは大地への想い、地球環境への想いが人一倍強い大石氏が強く発信したいメッセージの表現だろう。

大石氏は「アグリスクラムは農業者だけのスクラムだけでは不十分です。消費者の方々に加え、食品業界、加工業界、流通業界などあらゆる業界の方々と一緒に北海道農業の活性化を目指していきたいです。」と語る。

夢を尋ねた時、「夢ですか?」と笑い少し遠い目をした大石氏は、見据えたその先に自身の望む理想の社会を見ていたのかもしれない。

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★関連ウェブサイト

株式会社 アグリスクラム
http://www.agri-scrum.jp


大石農産
http://www.oishinosan.co.jp/

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