イノベーターズモード presented by キャリナビ北海道

File No24

株式会社 ヴァーナル北海道
専務取締役 秋元 力 氏

イノベーターズモード記念すべき第一回目にご登場頂いた写真家の清水武男氏から直々に強い推薦を頂き、 今回登場して頂くのはヴァーナル北海道 専務取締役 秋元氏。

話を伺うと確かに、これまでの歩みも、取組みも一辺倒ではない。

東京の設計事務所から札幌にUターン。32歳で留学のため渡英。
帰国後、主に化粧品を取り扱うヴァーナル北海道に入社。

現在もヴァーナル北海道で様々な取り組みを行っている。

ただ、秋元氏に一貫して共通するのは「デザインする」ということ。

「北海道のスタイルを作る!」「元気な北海道をデザインする!」

北海道を元気にするために、形に囚われない秋元氏の「デザイン活動」を聞いた。

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【建築デザイナーとして北海道にUターン 〜 「北海道スタイル」の確立を目指して】

--------出身は北海道ですか? >>秋元氏


そうです。北海道の札幌で生まれ、大学進学で東京に行きました。
もともと美術や芸術が好きで、建築やインテリア・デザインに興味があったので、
武蔵野美術大学の造形デザイン学科に入学し、家具や小物といったインテリアの小さなものから建築や空間系の大きなものまで、トータルにデザインを学びました。


--------卒業後は東京で働かれていたのですか? >>秋元氏


はい。卒業後は大学の教授が経営していたデザイン事務所で5年ほど働きました。
デザイナーとして、図面を引いたり、現場に行って指導をしたりしていました。
旭川まで行って家具メーカーにデザインの提供をしたり、またある時は、山奥まで行って山小屋をデザインしたりしましたね。

そこである程度の経験とノウハウを積み、27歳の時に札幌の設計事務所に転職し、北海道にUターンしてきました。


--------北海道に戻ってきた理由は何ですか? >>秋元氏


もともと、ある程度経験を積んだら北海道に帰って来ようと思っていたんですね。
北海道が大好きでしたから。
それに、「デザイン」というのは東京にいなくても、場所に関係なく、どこでもできるんだということがわかったのです。
東京には東京のスタイルがあり、ミラノスタイル、パリスタイル、ニューヨークスタイルなど、地域によってそれぞれのスタイルがあります。

しかし、北海道には「コレ」と言ったものがない。
それなら「北海道のスタイル」というものを確立するのに、自分が貢献できることもあるのではないかと。

北海道は北欧のフィンランドやスウェーデンと気候風土に似ていますし、規模も近い。
北欧は、それぞれ独自のスタイルを持っている。
それであれば、北海道でも「北海道スタイル」を持てるはずですよね。


--------北海道に戻ってきてからはどういった仕事をされたのですか? >>秋元氏


北海道にはそれ程有名なデザイナーや建築家がいませんでしたから、とにかく実際に建っている建築物を見て周って、自分が好きだなと思った人の事務所に、「働かせてください!」と、募集もしていないのに、押しかけました(笑)。
「最初の数ヶ月はただで使ってくれて構いません!」と頼み込んで、働かせてもらいました。

そこでの仕事は、建物のデザインをメインにしていました。
良い出会いもたくさんありましたね。
写真家の清水さんの事務所のデザインもやらせて頂いて、その縁で今も親しくしていただいています。

結局、そこで4年間勤めた後、単身イギリスに渡りました。


--------会社を辞めてですか? >>秋元氏


そうです。
ロンドンはヨーロッパ中からたくさんの建築家が集まってきている街です。

語学も勉強しながら建築を学びたいと思い、ロンドンに渡ったのです。
あちらでは、建築の短期セミナーを受講するなど、充実した日々を送りましたね。
やはり世界でも有名な、気鋭の建築家たちが集まっている街ですから、刺激は受けました。

世界中の建築家の多様な価値観に触れて、「えっ!?それあり?」と驚くようなこともたくさんありました。
でも、言葉も感性も違いますけど、芸術に対する考え方は同じなんだとも思いました。





【街並みや建物をいくら綺麗にデザインしても町は元気にならない! 〜 本物の「町のデザイン」とは】

--------ロンドンにはどれくらいいらっしゃったのですか? >>秋元氏


1年半です。
帰って来てからは独立して自分の設計事務所を作ろうと思っていたのですが、ここで大きな方向転換があったんですよね。

母親が化粧品の通信販売業を営んでいたのですが、その母が病気で倒れてしまい、事業の手伝いをせざるをえない状況になってしまったんですね。
それがヴァーナル北海道に入ったきっかけです。
友達から頼まれるなどして設計の仕事も続けてはいたのですが、母親を助ければいけない状況もしばらく続き、最初はどっちつかずの状況でした。


--------建築家から化粧品の通信販売とは、大きな転換ですね! >>秋元氏


そうですね。
商品の発送から、データの入力などあらゆる日常業務をこなしながら、とにかく化粧品の勉強、肌に関する医学書の勉強などを徹底的にしましたね。

肌知識、化粧品知識の勉強は、建築基準法の勉強に比べると比較的楽でしたけど(笑)。

普通は年を取ってくるとだんだん勉強しなくなるじゃないですか。
勉強するのがおっくうになってきたりしますよね。
でも僕は新しいことを学ぶのが好きなんですよ。
英語の勉強、建築の勉強…。それまでも絶えず勉強を続けてきた人生なので、化粧品の勉強もなんら苦ではなかったです。
もともと新しいことをやるのが好きですし、基本的に「どんなこともたいしたことはない」と楽観的に思うんですよ。

例えば、建築の世界でも「天才」といわれる人たちと普通のプロの差は歴然としています。
どんなジャンルでもそうだと思うのですが、本物の「天才」の域には到底たどり着けないんです。
だとすれば、何か一つのことだけに自分の世界を限定してしまうのはくだらない。
良い意味でこだわる必要は全くなくて、「どんなこともたいしたことはない」と考えて、何でも挑戦すればいいと思うのです。
その中で、いろんな事に挑戦しながら、それぞれに対して「自分のやり方」「自分のスタイル」ができるのではないかと。

だから僕は今も、次々と新しいチャレンジを繰り返しています。
例えば、コンサドーレ札幌のスポンサーとなってみたり、苫小牧の森の復興を目的とする観光ビジネス「イコロの森」に協力をしたり、写真を軸とした幅広い活動をする「北海道を魅せる写真家集団 miseru」の理事をしたり…。

ただ一つ変わらずに貫いているのは、「北海道を元気にしていこう」ということ。
いろんな人たちに会って、協力しながら一緒に、北海道を元気にしていこうという取り組みに全て繋がっています。
だから今は、建築家をしていた頃より、仕事が面白いですよ!


--------「北海道の活性化」にそこまでこだわる理由は何ですか? >>秋元氏


以前、設計事務所に勤めていた頃、過疎化の町を活性化するべく、市や町の活性化事業に携わった経験がありました。
道路を拡幅したり、街灯を揃えたり、建物をおしゃれにしたり、地域をまるごと建て替えるという活性化事業です。
北海道の知床半島にある清里町や、ニセコ町に行き、若いながら現場監督をやらせてもらったりもしました。

その仕事をしていた時に思ったのは、「自己満足だけで終わるようなデザインでは意味が無い」ということです。
デザインされたものがうまく活用されて、そこに活かす人がいて、その時に初めてデザインも活きるんですね。
いくら綺麗にハコだけを整えても町は活性化しない。
そこに住民のハートなどのコアな部分が存在しなければ、そのハコさえ残らない。
せっかくの綺麗な町であってもそこに住む人のアイディアや気持ちがないと、どうしてもその町は死んでしまう。
そういったことを痛感しました。

ヨーロッパでもそうなんですよね。ヨーロッパには昔の古い町並みが多く残されています。
古いものを壊して新しいものを作り、工事などの需要を作っていけばいいという日本的な考え方がありますけど、彼らが意図的に古いものを残している背景には文化的な信念があります。
過去の文化を「価値」として認め、国で残していこうという強い意志があり、それに従って町が形成されています。その結果として、観光収入などにも繋がっている。

そういったことを考えると、「デザインするモノだけを考えていてはダメだ!」と思ったのです。
だから僕は、ただ建物やインテリアなどのハコだけをデザインするのではなく、違った形で「町をデザインしていくこと」に貢献したい。
そう思ったのですね。


--------先ほどおっしゃっていた「北海道スタイル」の確立には、そういった価値観や考え方の確立が必要かもしれませんね! >>秋元氏


そうですね。
やはり僕は、北海道から世界に誇れるものを発信していきたい。
そのためにはいいデザイナーを育てなければいけないのは当然ですが、その前提としては、デザインの価値が認められる土地にならなければならないということです。

北海道ではまだ、デザイナーがデザイナーとして認められて、その価値に対してきちんとお金を出すというところまで、なかなかいっていないんです。

「家自体は2000万円だけど、建築デザイナーに300万円を別に払えますか?」といった時に、「それだけ払ってもお願いしたい!」という人が北海道にはなかなかいません。
デザインの持つ付加価値がわからない人に300万円は出せませんから。
それが北海道に著しく欠けている部分です。
金額には換算できない価値が、なかなか理解されづらい。

札幌は市がデザイン学校を作ったり、イベントを開いたりと、アート都市として売り出そうとしているようですが、行政は本当に理解しているのでしょうか。

単純作業で可能な、安いものを作るのであれば、中国や東南アジア、インドなど人件費が安い国は、いくらでもあるわけですよ。
機械的、効率的にできるものであれば、コンピューターにやらせた方がいい。

単純作業ではできない、コンピューターではできないものが何かと言えば、「感性が必要なもの」なんですよね。
だから、デザインに表れる個性や感性と言うものに凄い付加価値がつくわけですよ。
そのことを行政も市民も理解しないと、北海道は「アート都市」になれないですし、スタイルの確立はできませんよ。


--------かなり様々なメセナ活動(※)を行なわれているようですね? >>秋元氏


そうですね。
観光だけに頼って、北海道を活性化するのは難しいと思っていますから。


そういった意味で投資活動はしています。
スポーツ、芸術、自然、イベント、お祭り、メディア…。
例えば雪まつりが終わった後に、雪まつり会場を使って行なった「大通りにぎわい祭り」や大通公園で夏に開催される「花フェスタ」のスポンサーになったりと様々な活動をしています。

実は、このヴァーナル北海道の社屋を新しく建てたのもそういった考えの一つだと思っています。
自ら稼いで、自らかっこいい町を作っていこう、と。

でも、そういった活動をするためには勝ち続けなければいけないんです。
勝ち続けなければ、夢さえ語れないと思いますから。
僕にはチャンスが与えられている。
だからこそ勝ち続けなければいけないと思いますし、僕には夢がありますから、それを実現できるような状況を自ら作っていきたいと思っています。


※メセナ・・・文化・芸術活動に対する支援や投資を行なう活動のこと。


【仕事は95%のつらさと5%の喜び 〜 本当に楽しさを感じるために、まず目の前にあることを必死にやりこむ!】

--------夢と言う言葉が出ましたが、秋元さんの夢とは何ですか? >>秋元氏


わかりやすいことですよ。
単純ですけど、「この北海道を元気にしていきたい!」ということです。
北海道に住んで、北海道から全国にアピールできるようなビジネスをしていきたいということです。


--------北海道の好きなところはどこですか? >>秋元氏


バランスがいいのではないでしょうか。
自然・文化・環境と人が住む上でのバランスがとてもいいと思います。
東京などの都会は何かが著しく欠けている。大きな喜びもあるけど、その分ストレスも大きい。
札幌は人が生きて良くための環境に、バランスが取れているのだと思います。


--------では、北海道の現状に感じる良くないところ、苦言などはありますか? >>秋元氏


「のんき」ということですかね。スピード感がない。
先程「人が生きていく環境のバランスがいい」という話をしましたが、「努力するバランス」の感覚は足りないと感じています。
目先にあるものだけをやっていても、伸びないと思います。
北海道は、東京や世界の人達を参考にして、もう少し先を見て考えることが大切なのではないでしょうか。

人がやらないことをやる、人と同じ事をするんだったらもう一つプラスして何かをやる。
そういう考え方でやっていかなければ、チャンスはないでしょうね。
厳しさのない、「ぬるさ」が北海道にはありますよね。
そうした考え方やノウハウを持った人がもっとこの土地に来てくれて、足りないエッセンスを提供していってくれれば、北海道はもっとよくなるんじゃないでしょうか。


--------ありがとうございます。

最後に、現在フリーターやニートなど社会的に大きな問題になっています。
「やりたいことがわからない。」「好きなことが見つからない。」と就職しない、就職できない人が増えてきています。そういった方たちにメッセージをお願いします。
>>秋元氏


仕事は「やりたいからやる。」「好きだからやる。」というわけではないと思います。
100%好きで仕事をしている人はほとんどいないと思いますよ。
僕も楽しそうに話していますが、95%はつまらないですから(笑)。
5%の喜びの為にやっています。
ゲームみたいに最初から最後まで楽しくて、嫌なことが一つもないということは仕事である以上あり得ないですし、嫌なことが5%しかないということもあり得ないですよ。
楽しいとか、好きだとか、そういう目的で仕事を選ぶのではなく、目の前にある仕事をまずは一生懸命やるだけだと思います。

デザインをしていた時もそうでしたけど、自分の思い通りになる仕事なんてほとんどない。
自分の好きなものをやったとしても先輩に怒られて、ダメ出しされる。
自分のスタイルを確立するには、時間も努力も必要です。
それまでは人を真似たり、自分を鍛えつつ、必死にやること。

好きなものが無いという人は、まずは何をやりながら、その中から見つけ出せばいい。
必死になってやりこまないと面白さなんてわからないですよ!


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★取材を終えて

建築家と化粧品の通信販売という仕事。
話を聞くまでは異業種のこの二つの共通点を見つけることはなかなか難しかった。
しかし秋元氏の話を聞いて「なるほど。」と頷けた。

業態や業種は違っても、そこには同じ一つの想いがある。
秋元氏はその想いを常に持ち続け、行動を続けてきたのだろう。
「北海道を元気にする!」ために、形に囚われずに自分のスタイルで北海道をデザインしてきた秋元氏。

「仕事の95%はつまらない」と笑って話したその背景には、「勝ち続ける」ための苦労が伺えたが、その先にある大きな喜びのため、大きな夢を実現するため、秋元氏は今後も自身の描く理想の北海道をデザインし続けていくのだろう。

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★関連ウェブサイト

株式会社ヴァーナル
http://www.vernal.co.jp/

NPO法人 北海道を魅せる写真家集団 「miseru」HOKKAIDO
http://www.miseru.jp/

イコロの森
http://www.ikor-no-mori.com/

イコロの森 ブログ
http://ikor-no-mori.jugem.jp/

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